みがわり猫地蔵
インタビューを5分間収録
吉田 実さん 明治44年7月生,87才 茅野市北大塩.在住
 平成十(1998)年3月16日宝勝寺裏の畑にて採録
 向陽山宝勝寺 茅野市北大塩米沢市峠麓口
話し手吉田 実さん  
聞き手飯田美智子、徳光 宣子、原田 頼子、原田 信義
 
★★ みがわり猫地蔵 ★★
  
吉田このお寺(宝勝寺)には、猫地蔵というのがあってね。もうそんな話は、だれも知らないでしょう。
 昔、六部が大門峠で行き倒れになった時、夢枕に猫がたって、このお寺を教えてくれたんだって。それで、やっとこのお寺にたどりついた。
 その話をお寺さんにしたら、お寺さんでは、猫が昨夜焼け死んだというんでね。猫が身代わりになってくれんたんだということで、お地蔵さんをたてて供養したんだ。それが本堂にまつってあったんだが、いつの頃か外にだされて今の所にまつられたんだよ。もう誰もいわれなんか知らないだろうね。
聞き手 昔、この辺は、どんな様でした。
吉田この辺は、昔は、あまり変動がなく200戸前後でした。増えたり、減ったりもなくてね。蚕がさかんで、現金収入だったからね。
 あと山仕事だね。山は、この裏の方で、二百ヘクタールあってね。六反歩ずつ分けて貸してあり、誰でも入っていい共有林があって、そこで「たき物」やすみ焼きをしていたね。
 この向こうに「市道」(いちみち)と呼んでいる道があって、そこから市峠(いちとうげ)を通って清陵まで歩いたんだよ。昔は皆歩いたもんだよ。
聞き手 吉田さんの行かれた小学校は。
吉田このお寺の下の田圃の所にあった。北大塩小に三年通ったよ。それからは、今の米沢小に通ったね。北大塩小の時は、わしらの組は42人で男は17人だったね。女衆がえらかったね。つよくてね。 
 
★★ 年中行事 ★★
聞き手 昔のお正月は。
吉田 お雑煮だね。モチが一番のごちそうだったからね。モチは九の日はつかないという言い伝えでね。あと塩鮭だね。川で塩抜きをしてね。雑煮にはチクワをいれたね。あと、組合の庭で二十八日頃、茅野の業者の人を呼んでウサギをつぶしてもらったんだ。どこの家も大体ウサギを飼っていたから、つぶしてもらって、雑煮に入れたんだよ。出し汁にしたんだね。野うさぎ狩もしたね。昔はたくさんいたからね。今は見なくなったね。キツネが増えたからね。
 一日には、この辺のお宮にまいったね。今の人は、みんな諏訪大社に行くようだね。 お雑煮を神棚にあげたね。農家はみんな恵比寿・大黒・荒神様を祭ってあったからね。お荒神様は行者が歩いて札を売ってたね。
 次は小正月だね。1月14,15,16日とね。16日はお墓参りをしたね。ドンドン焼きは、昔は「辻」でやったね。一軒で一把ずつ「ボヤ」を持ち寄って14,15,16と三晩たいたんですよ。北大塩には六部落あったんで、六カ所でドンド焼きをしたんだよ。ここは「内久保組」といったんだ。ドンドン焼きとかドンドンビンといって厄除けだね。年番が世話をしてね。
 昔、蚕をやっていた家は、観音さまを信仰していたんだよ。馬頭観音を信じていたんだ。観音さまが馬に乗ってやってきたという言い伝えでね。だから、八十八夜に馬の靴を借りてきて、翌年の八十八夜にかえしたんだよ。馬も大事にしたね。馬の草は霧が峰(車山)まで一日に二回刈りにいったんだよ。平らな道は、馬に乗っても、山道はかわいそうと歩くんだよ。田の仕事のあとは、馬の足を洗ってやったり、大事にしたよ。なにしろ、家の三分の一は馬屋だったから、蚕もいたし、夏はハエがすごかったね。
 
★★ 代参 ★★
  
吉田11月24日は「甘酒まつり」で、秋葉様・戸隠様の代参のくじを引いた日だね。もちろん歩いてお参りしたよ。戸隠様には、大門峠を通って丸子まで歩いてね。一泊で行って帰ったね。秋葉様へは、杖つき峠を抜けて長谷村・分杭(ぶんくい)峠で秋葉街道に出て、大鹿村を抜けてね。これも一泊で行きました。
 七月五日は、十五社(じゅうごしゃ)で「うぶすな様」のお祭りです。九月十九日は小原のお祭りだね。長もちが出たり、お客を呼んでにぎやかでしたね。
 昔は、映画を茅野まで歩いて見にいったよ。中央座といって、大塚神社の所だったね。公会所(舞台)で田舎芝居が時々かかったね。
 あと、楽しみは、若い女衆が「宿」というのをやっていたから、そこへ行って、カルタやトランプをしたね。
 このお寺の境内の右手の建物は、舞台になっていて、村の若い衆が芝居をやっていたんだ。
 今日は、どうもありがとうございました。
ここは、すばらしい眺めですね。いろいろと楽しいお話をありがとうございました。
宝勝寺宝勝寺宝勝寺
        目  次

(一)行動する博物館ボランティア・・・・・・両角源美
                茅野市教育長(前八ヶ岳総合博物館館長)
(二)吉田 実さん(北大塩)
    1.みがわり地蔵  2.年中行事    3.代 参
(三)吉田幸男さん(北大塩)87才
    1.七 社     2.あま酒まつり  3.滝の御前    4.道祖神
    5.殿様水
(四)渡辺 成さん(北山芹ケ沢)77才
    1.鬼 石     2.諏訪電気株式会社3.泉渋院     4.七 社
    5.辻の道祖神   6.ドンドン焼き  7.赤天狗青天狗  8.夜遊び
    9.デイダラボッチ
(五)篠原 寛さん(北山糸萱)96才
    1.小学校時代   2.電気の始まり  3.冷 山     4.横谷峡
    5.徴兵検査    6.かんだちさま  7.白駒池
(六)宮沢幸男さん(湖東中村)96才
    1.短歌と油絵   2.徴兵検査    3.大塩とは    4.神田原
    5.諏訪一の杉   6.昔の生活    7.中村学校
(七)柏原公民館 両角仁司さん,両角忠一さん,守矢奥次さん,篠原淳朗さん
    1.柏原のはじまり 2.おかんばば   3.ベテイジン   4.チャンチキ爺さん
    5.白樺湖のできかた6.白樺湖の遺跡  7.白樺湖の名づけ親8.三本の棒道
(八)茅野松幹さん(小屋場)84才
    1.小屋場のいわれ 2.行者小屋    3.文三郎道    4.山での遭難
    5.お嫁入り
(九)伊藤益郎さん73才&いせさん72才
    1.大正月の行事  2.歳とり     3.おひねり袋   4.かにの歳とり
    5.柳の箸・ヌルデの箸        6.ゆいつぎ    7.本ダレ様
    8.事八日     9.作始め     10.獅子舞
(十)「山浦の語りべ」の発行によせて・・・・篠原淳朗(八ヶ岳総合博物館館長) 
(十一)あとがき
   ←表紙・中表紙の題字・・・・・・・・・平林圭治(茅野市美術館館長)


編集・印刷・製本/博物館ボランティア
飯田美智子/茅野市北山、徳光宣子/茅野市宮川、伊藤いせ/茅野市湖東
小川千里/原村、中村智子/茅野市豊平、原田頼子&信義/茅野市豊平(事務)
「山浦の語りべ」第1集   B5判120頁 400円 1999年2月21日発行
              CD-ROM版 1,000円(2006年3月4日発行)
391-02 長野県茅野市豊平6983 八ヶ岳総合博物館TEL.0266-73-0300
著作権/博物館ボランティア 連絡先 原田信義TEL.0266-76-3770 
e-mail:radish0@po8.lcv.ne.jp URL:http://www.mt8.net/yamaura
CD-ROM版 小川千里

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